リリは、目の前に突然現れた石のモノリスを慎重に作動させた。
ただの柱だと思っていたその石の塊は、前面だけを地面へと飲み込んでいく…
………は?
一同唖然。
なんとそこから出てきたのは女性…。
彼女が敵なのか味方なのか全くわからない5人はどうすることも出来ずしばし沈黙する。
すると女性は崩れる落ちるように地面へ手をついたかと思うと、すっと立ち上がり目を開けた。
ああ…ここは…あなた、誰に言われていらっしゃったの?
リリはまだ戸惑いつつも「イスランって人だけど…」と返したが、彼女は少し考えて「存じませんわ…誰なのかしら」と言う。
そして「私と…同じですの?」と…
…全く話が見えてこない。
同じってなにが…?
すると彼女はすごく言いにくそうに…「きゅ…見てお分かりでしょう?吸血鬼ですわ」と呟く。
きゅ…きゅ…
きゅーーーーー!!!??!?!
その言葉を聞いて一斉に5歩は下がった一同。
吸血鬼?このおねーちゃんが?
雰囲気といい、見た目といい、なんだか今まで倒してきた吸血鬼とは少し違う感じがする。
なにより全く攻撃性がなさそうだ…
「なんでこんなところに入ってたの?」と聞くと、彼女は「自ら入ってたわけじゃありませんわ、閉じ込められていたと言ったほうがいいでしょうね…その理由は複雑で…」と言葉を濁した。
どうやらこちらのことを信用できるかどうか考えあぐねている様子で、「すべてが知りたいのなら、まずは家族が住む家に帰してくれないと」ということらしい。
ここはどうするべきかと考えながらチラとヴィリヤたちを見ると、4人ともがなんとも言えない表情で突っ立っている。。。
きっとみんなもどうするべきか決めかねてるんだろう…
えーっと…
一応聞くんだけど、その家族が住む家っていうのはどこにあるの?
わたしの実家です。歓迎こそされませんが、誰がいるかによっては安全なはず
・・・・・・・
またそんな物騒なことを言うわけね…
「安全じゃないっていうのは…」と言い終わらないうちに彼女は続ける。
「わたしの父母がちょっとした仲違いをした、とだけ言っておきますわ。
別段、危険にさらされてるわけではございませんの。父に会うのがそれだけ不愉快な出来事になるだけで」
彼女はかなり長い間ここに閉じ込められいたようで、ウルフリックやエリシフのことはもちろん、シロディールの帝国のことさえも知らないようだ。
色々と問題を抱えていそうな彼女をここに放置していくのも躊躇われ、「わかった、一緒に行こう」と手を差し出すと彼女は少しだけ嬉しそうな笑顔を見せた。
ところで…わたしはセラーナ。どうぞよしなに
「セラーナね。私はリリ、よろしくね」
「イニゴだ、吸血鬼と旅をするのは初めてだな」
「や、やあ!ルシアンだ、よろしく頼むよ」
「オーリよ」
「ヴィリヤよ、よろしく…」
ぎこちない挨拶が終わり、セラーナは「急ぎましょう。家に帰って何が起きたのかを見極めなくては」と言うものの肝心の出口がわからない。
ここに閉じ込められていたのだから、なんとなくでも方向はわかるかなと思ってセラーナに尋ねてみるも「わたしにもよくわかりませんわ。幽閉されていた頃からずいぶんと印象が変わっていますのよ」と言うばかりで当てにならない(*´Д`)
「…とりあえず来た方向とは逆のほうへ進んでいくしかないな」
イニゴがそう言って歩き出す。
みんなもそれについていくが雰囲気はとても重苦しく、セラーナへの接し方を考えているようだ。
友好的な吸血鬼には会ったことがない。彼女は信頼できると思う?
オーリの言葉にヴィリヤも言葉を詰まらせている。
微妙な空気の中、一行はイニゴの後を追い、来た道とは逆の方向へと進んでいく。
目の前には階段。そこに踏み込んだその時…
待って!なにか聞こえたような…!
ガーゴイルの石像だと思っていたものが突然ボコボコと動き出し雄叫びを上げた!
「うそっ!?動いた!?」
ガーゴイル達は一目散にリリ達に向かって走ってくる!
先陣を切っていたイニゴが一番に飛びかかった!
さすが元岩だけあってガーゴイルの体は固く、矢を放つも深くは刺さっていないようだ。
「吸血鬼よりこいつのほうが断然強いんですけどー!」
そう叫びながらも、確実に一匹目を倒し二匹目に取りかかる。
見ると、セラーナも怒りの形相で魔法を放ち苦戦しているようだった。
なんとかガーゴイル二匹を倒し終え先へと進む6人。
ここの敷地はかなり広く、ぐるぐる回りながらも辿り着いた一つの部屋。
棺がいくつか置いてあり、どう考えても怪しげなレバーが一つ。
右側には宝箱と死霊術治癒の呪文書が置いてある。
何はともあれ、宝箱の中身と呪文書だけは一番に懐に入れ…レバーの前へ…
作動させる以外ないよな…
そうだ、レバーがあればそれは引け!ってことなのだ。
まぁ、なんとなくどうなるか想像はつくけれど…
では…
ガッシャン!
はい、思ってた通り出てきた出てたドラウグル!
カンカンカンカンと盾を叩きながらテンションあげあげで迫ってくるドラウグルに怒りの鉄槌を!
後ろの奴はなんか笑顔だし…
さくさくーっと倒したのち、奥の棺裏にある宝箱も発見!
そして、左へと続いてる道へ進もうとした時、ヴィリヤに「ちょっと…」と呼び止められた。
正気なの?本当に吸血鬼の女を一緒に旅させるつもり?そんなの怖いわ!それに彼女が私を気に入ってくれるとも思えないもの
たしかにヴィリヤの言うことはごもっともで反論の余地はない。
「でも、あのままここに放っておくわけにもいかなかったし。
それにもし私たちを襲おうと思ってるなら、ガーゴイルの時にいくらでもやれたと思うんだよね。
でもセラーナはそうしなかった。
本来なら仲間だと思うガーゴイルもしっかり攻撃してたもの。
それに、吸血鬼ハンターとしては敵の本陣がどこなのか調べられるチャンスでもあるよ。」
リリがそう言うと、ヴィリヤと一緒に聞いていたルシアンも「確かにな…」と顎をさする。
それはそうだけど…。なんだか嫌な予感がするのよ…
ヴィリヤはそれだけ言うと先へと歩いていってしまった。
そしてすぐにイニゴがやってきたかと思うと「ヴィリヤの言う通りだ、真の目的が何かあるのかもしれないからな」と真剣な表情で耳打ちする。
もちろん、そんなことはわかってるつもりだ。
これでも盗賊の端くれなのだ。
盗賊団の教訓は「まずは疑ってかかれ」だった。
確かにセラーナの境遇には同情する。両親の不仲、こんなところに幽閉されていた事実。
しかしすべてが罠かもしれない。
私たちがここへ来ることを知っていたとしたら目的はなんだろう?
彼女が私たちを攻撃してこないのは、その家族の待つ家とやらに誘導させたいためじゃないのか?
そこに誘い込んで一気に全滅させる気とか…?
でも、ヴィリヤにも言ったけどこれはチャンスだ。
セラーナを見ている限り、あの子は絶対いいとこのお嬢様に違いない。
それにこんな大掛かりな仕掛けまで作って隠しておいた理由は、きっとすごく重要なことに絡んでいると思う。
彼女の家に行けば長がいるのは確実。敵の本拠地がわかればドーンガードの仕事も大いに捗るだろう。
そんなことを思いながら進んでいった先にあったものは、中央で燃え盛る炎をぐるりと取り囲んだ大広間だった。
「出口はちょうど向かい側だな」
イニゴがそう言い歩き出そうとしたとき、またセラーナが「ちょっとお待ちになって!今何か音が…」と腕をつかんだ。
よく見ると炎を取り囲んでいる椅子にドラウグルが座らされている。
そして、確かにどこかから「ぐるるるる」という呻きのような音も…
「またでたー!」
岩場の影からのっそり出てきたのはフードをかぶったドラウグル。
右手に剣、左手に青白い炎を纏わせているところから見ると、生きてた頃のジョブは魔剣士と見た!
あわあわしていると、先ほどのリリの声に反応したのか椅子に座っていたドラウグルまでもがもそもそ立ち上がってきているではないか!
数が多いな!手分けして倒すぞ!
次から次へと立ち上がってくるドラウグルたち。
広場には剣を交える音が響き、魔法の光が飛び交い、矢がいくつも放たれる。
そして、リリが射た矢が最後のスケルトンに命中した時、辺りは再び静寂へと戻った。
終わりか?勝ったのか?
さぁ、先に進もう!
リリ達は再び出口を目指し歩き出した。
あとがき
やっとセラーナ嬢をお迎えすることが出来ました~!長かった~!
そして、今回初めてセラーナの自作美化をしてみました。
なんか色々とうまくいかず大変だったんですけど、なんとかうまくいった!
セラーナといえば黒髪ロングで赤目っていうのがテンプレな感じで、今まで使わせて頂いてた色々なセラーナ美化MODも大抵はそうだったんですね。
なので、ちょっと真逆なセラーナ嬢というのを作ってみたくなってこんな感じになりました。
本当は真っ白の髪にしたかったけど、それだと白飛びしちゃうんで飛ばないギリギリの金髪に。。
自作美化ってやり始めると楽しいんですけど、悩ましいのが”どうしても同じような顔になる”ことです。
作ってる側の「かわいい」「きれい」の基準は早々替えられないので、かっこいいお姉さん作ろうとか優しそうなお姉さん作ろうとか思っていても気づけば似たような顔になってしまってる(笑)
総合美化MODとか、みんな美しいお顔立ちなのにちゃんと個性が出てるって本当にすごいと思います。
ちなみに、今回初めていれた「Serana Dialogue Add-On」ですが、とっても楽しいです。
セラーナとの会話により一層深みが出ますね!おすすめです♪