「ふぅ…一時はどうなるかと思ったよ…」
「ほんとにねー…」
光の差し込まない洞窟からやっと抜け出せた2人が歩き出したその時…
「待てっ!」
ハドバルが突然声を上げた。
空を見上げると、さっきヘルゲンを襲っていたと思われる黒々としたドラゴンが一匹飛んでいくのが見えた。
「行ったみたいだな…。だが戻ってくるかも知れない。ぐずぐずしてる場合じゃないぞ!
ここで別れたほうがいいかもしれない。幸運を祈る。お前がいなければ、ここまで来られなかったろう。」
……何か忘れてやしませんか?
……くそ…覚えてたか…
「”別れたほうがいい”じゃないよ、別れないよ、貰うものをもらうまでは(´・ω・`)」
「はいはい、わかりましたよ。。
ここから一番近い町はリバーウッドだ。そこまで行けば店もあるし、お前が必要なものもある程度はそろうだろう。
それに、俺のおじさんがそこで鍛冶屋をやってるんだ。
だから、色々と面倒も見てもらえると思う。」
こうして、とりあえずリバーウッドという町に向かうことにした二人。
途中、ハドバルはリリに帝国軍に入ることを勧めてきた。
「お前はソリチュードへ行き、帝国軍に入るべきだ。我々はお前のような者を必要としているんだよ」
「はあ?なんで無実の人間を処刑しようとした帝国軍なんかに入らなきゃいけないのよ」
「確かに、、帝国軍とは最悪の出会い方だったことに違いはないが、あの女隊長のようにザルなやつらばかりじゃない。
テュリウス将軍を見ただろ?あんなドラゴンの攻撃の中でも、市民だけに関わらず囚人にも救いの手を差し伸べてた。
すごい人だよ、あの人は。
テュリウス将軍ならきっとストームクローク軍を抑え込むことができると俺は思ってる。」
たしかにあの将軍の動きはリーダーとしてのそれだった。
それに比べてウルフリックは…
だけど、私は帝国軍に入るために来たわけでもドラゴンと戦うために来たわけでもない。
「まぁ、気が向いたらね」
リリがそう返したところで、急に茂みの奥から山賊が三人襲ってきた!
「なんだ!?」
「怪我したくなかったら持ってるもん全部よこしな!」
山賊の一人のオークがそう凄みを利かせながらハドバルへとにじり寄る。
「ちょっと待て!俺たちは何も持ってない!それよりもお前たちも早くここを離れろ!ドラゴンが…」
スパーン!スパパーン!!スパパパーーン!!!
「え……?」
小気味のいい音がしたと思った瞬間、山賊たちはその場でパタリパタリと倒れだす。
見ると、リリが弓を構えていて山賊たちの胸にはきれいに矢が深々と突き刺さっている。
ハドバルさぁ…ちょっと甘すぎじゃない?
こんなもんはさっさと駆除するべきだよ?
いや、話してるんだからさ…とため息をつきながら「まあいいか…」と再び歩き出す2人。。
しばらく道を下っていったところに見えてきたのは三つの石碑。
「あれなに?」
「あれは大守護石。スカイリムの各地に3柱の古代大立石があるんだ。そのうちのこの3本が“大守護石”なんだよ。
行って守護を受けてみたらどうだ?きっとお前の力となるだろうよ。」
近づいてみてみると「戦士の石碑」「魔術師の石碑」「盗賊の石碑」と書いてある。
「戦士系だと、両手と片手武器、それから弓術、防御に重装、鍛冶のスキルの上昇速度が20%増加する。
魔術師なら、魔法各種のスキルと付呪の上昇速度が同じく20%増加。
そして盗賊だが…これは軽装や隠密、話術に錬金術、それから…開錠とスリの上昇速度が20%増加する。」
詳しい説明ありがとう。Wikiペディアみたいだね。
「…うぃき?なんだって?」とポカンとしているハドバルを横目に迷わず「盗賊の石碑」に手を伸ばしたリリ。
「まぁ…なんとなくわかってたよ…(´・ω・`)」
ハドバルは納得の表情で「さあ、先を急ごう」と歩き出した。
「見えてきたぞ、あれがリバーウッドだ。」
木製の看板には確かに進行方向に「リバーウッド」と書いてあった。
鍛冶屋らしき所でカンカンと鉄を打っている男性を見つけたハドバルは「おじさん!」と声をかけた。
「ハドバル?!ハドバルじゃないか!一体どうしたんだ?何事だ?それにこれは誰だ?」
質問攻めにあうハドバルは「落ち着いてくれ、とりあえず中で話そう」と返事をし、リリのことは簡単に「友人で命の恩人なんだ」と答えている。
「シグリッドに何か食べ物を持ってこさせるよ」と話すアルヴォアに「助かるよ」と言いながら家へと入っていく三人の後ろでは、何やら騒がしい会話が…
それは山みたいに大きくて、夜みたいに真っ黒だった。墓地の向こうへ飛んでいったよ
息子と思われる男は「頭がおかしくなったと思われるからやめてくれよ…」とため息をついている。
きっとあのおばあちゃんが見たのは先ほどのドラゴンだろう。
でも…口で言ったところで信じてくれる人はなかなかいないだろうなと少し不憫に思ったリリであった。
ハドバル!心配していたのよ!2人ともお腹すいたでしょう。座って。食べ物をあげるわ
アルヴォア家に入ると、妻のシグリッドがすぐに食事の支度をはじめてくれた。
「言ったとおりだろ?世話してくれるって。シグリッドは俺の姉ちゃんなんだ。」
自分の家族に会えたことで気が緩んだんだろう、その表情はヘルゲンでのそれとは違い緊張感はどこにも感じられない。
ハドバルは席に着くとパンを片手に話し始めた。
どこから始めりゃいいかな。俺が、テュリウス将軍の衛兵に任命されたのは知ってるだろ
ウルフリックを捕えヘルゲンで処刑する寸前だったこと。
そこへとても大きなドラゴンが現れてヘルゲンの町を破壊したこと。
ウルフリックはその騒動に紛れて逃げてしまい、自分たちはヘルゲン砦を通ってここまで逃げ延びたということなど…
アルヴォアは全て聞き終えると「お前に頼みたいことがある」とリリに向かい合った。
「ホワイトランの首長にドラゴンのことを報告してくれないか?
ヘルゲンからリバーウッドまでそう遠くない、襲われでもしたら大変なことになる。
今すぐ衛兵たちをリバーウッドに派遣してくれるよう頼んできてほしいんだ。」
ムリデース
「ああ、ありがとう!頼んだぞ!急いでくれよ!」
「いや、だから無理だってば、忙しいんだってば」
「お前がいてくれて助かったよ、ほら、頼まれてくれたら、ここにある物なんでも持っていっていいぞ(⌒∇⌒)」
ホワイトランはどこでしょう?
アルヴォアは「常識の範囲でだぞ!」と付け足すと、ホワイトランへの道筋を簡単に教えてくれた。
さてと…ホワイトランか…ホワイトランねぇ…と一人考えていると、「こんにちは」と声をかけられる。
アルヴォアとシグリッドの娘、ドルテだ。
「うん、見たよ」と答えると、嬉しそうに「どんな姿だった?」「やっぱり炎を吐いたの?」と興味津々のご様子。
そこから話は家族…特に母親への愚痴に変わっていった。
どうやらドルテは母親のシグリッドの”理想の娘”とはかけ離れているようで、シグリッドは女の子らしい娘になることを期待しているにも関わらず、ドルテ自身は鍛冶が好きなおてんば娘であるようだ。
例えば、編み物や畑仕事、料理などを母親はさせたがるようだが、彼女は父親と鍛冶がしたくてたまらないんだとか。
そういえば、ここに来た時一番にシグリッドに言われた言葉が「あなたが可愛いのは認めるわ。でも、夫のアルヴォアには近づかないでね」だった。
それと、今のドルテの話を聞いているとかなり癖のある人物のように思える…というかあまり関わりたくない人物ともいえる…。
「いつか鍛冶屋になるのが夢なんだ!」
満面の笑顔でそう話すと、「パパ、待って!」とアルヴォアの後を追っていってしまった。
なあ、俺はしばらくここで休む事にする。ここからソリチュードまではひとりで行ってくれ
ドルテの後ろ姿に手を振っているリリにハドバルがそう声をかける。
「ソリチュードには行かんけどな(´・ω・`)」
「いや、行こうよ」
「いや、行かへんし(´・ω・`)忙しい言うてるやん」
「じゃあ、時間ができたらでいいから!」
「それよりも…また忘れてるよね…」
くそ……やっぱり忘れてなかったか……
ハドバルは「で、なにを弁償すればいいんだ?この辺だとリバーウッド・トレーダーに行けばある程度のものは置いてあるぞ」と言う。
まず鎧ね、総額10000Gはしたと思うからそれ相応のやつね。
あとはお金。残ってた分を全部持ってきてたから全部で…えーっと…500万くらいだったかなぁ。
あと武器はね…
「ちょ…ちょっと待て…鎧で1万?!金が500…!?
嘘はいかんよ嘘は!お前みたいな小娘がそんなにもってるわけないだろう!?」
「嘘じゃないよ、まぁ証拠はないけど…でも嘘じゃない。私ね、キャットタワーの一員だったの」
その言葉を瞬間、ハドバルの顔色が変わった。
「キャットタワーって、あのキャットタワーか?!盗賊団の!?」
「そうそう、盗賊団、盗賊団」
「どこにいるかもわからない、誰も見た事がない、しかし仕事は超一流というあの盗賊団の?!」
「うーん…シロディールの辺鄙な場所にいたけどね。まぁ基本的に盗賊だからそんな人目につくような動きはしないよね」
「盗賊とはいっても実際は義賊で彼らの救いで命拾いした者も多いと聞くあのキャットタワー?!」
「あー、そうそう。でも私はまだ幼いからって理由で仕事をさせてもらったことはなかったけど」
そこまで話すとハドバルは「まじかよ…まじかよ…」と大興奮しながら「ここここれは…だ、だ、誰にも言わないほうがいいんだよな?!」と聞いてくる。
っていうか…そんな興奮するようなことなの??別に言っても構わないよ、まぁたぶん誰も信じないと思うし…
それにみんな殺されちゃったから…もう解散したも同然だよ…
「いや、、いやいやいや…これは俺の胸だけにとどめておくよ。
それに…リリ、どんな事情があるにせよキャットタワーって言ったら宇宙人を見たっていうのと同じくらいの衝撃があるんだ!
だから無暗にその名を口に出してはだめだだぞ!わかったか?!」
ふぅーん、、そんなもんなんだ…中にいると世間の評判なんてわからないものだなと思いながら「わかった」と返す。
「それから、ほら!
悪いが、お前が持っていたものを全て弁償するのは俺には無理だ。これで勘弁してくれ。」
ハドバルが差し出してきたのは、5000ゴールドだった。
「今の俺の持ち金全部だ。それでどうにか装備は揃えてくれ。
ここから道なりにホワイトランに行くといい。そこから馬車でソリチュードに行ける……」
聞いてんのか……
もう何も言うまいと決めたハドバルであった。
「それよりもさ、霧が多くて陰気臭い場所ってどこかわかる?」
リリは宝箱からいそいそと戻ってくると当初の目的である「霧が多くて陰気臭い場所を探す」を達成すべくハドバルに聞いてみる。
「霧が多い場所?うーん、、スカイリムは基本的に霧の多い土地だからな。どこと言われても困るが…」
そうか、スカイリムって霧が多いんだ…これは思っていた以上に難航しそうだなぁ…
でも落ち込んでる暇はない。
とりあえずは、聞き込みをするしかない!
それにしても…これなんだろ??
さっき漁った宝箱の中から発見したカード。
しばらく眺めていたが、よくわからなかったのでそのままポケットにしまった。
「今日はもう遅いから向かいにある宿屋で休むといいよ。ホワイトランへは明日向かうといい。」
ハドバルの助言に従い外へ出ると、確かに向かい側に「スリーピング・ジャイアント」と書かれた看板が風に揺れていた。
とりあえず今日はもうおそい。おなかもすいてきた。。
「なんかおいしいものあるかな~…?」
さっき食べたばかりなのに、すでにお腹を空かしているリリなのであった。。