バナード・メアのアルゴニアン・エール

「バナード・メアの吟遊詩人ミカエルが、”紳士のホワイトランガイド”の著者だって知ってた?フン、今まで読んだ中で最低な作品だったわ!」

ヴィリヤが憤慨しながらお喋りをしているのは、すっかり日が落ちた夕闇のホワイトラン。

えー、そんなひどい内容なの?っていうかミカエルって?

大丈夫よ、オーリ。これからいやでも会うことになるから!

賑やかに歩いていく一行がホワイトランの馬屋に差し掛かった時、ルシアンが「あ!あれってヴィリヤの探してたキャラバンじゃないか?」と指さした。

見るとホワイトランの入口にテントを張っているカジートたちがいる。

ヴィリヤが「ほんとだわ!」と急いで走り寄ると、座り込んだカジートが「やあ、いらっしゃい」とにこやかに声をかけてくれた。

「突然ごめんなさい。リサードってカジートを探してて…
ちょっと聞きたいことがあるの。
シロディールハナミズキのフルートを持ったカジートを見なかった?」

ヴィリヤがそう問いかけると、カジートは「うん?私がリサードだが…。」と答えた。

もちろんリサードはラジーンと魔法のフルートのことを知っている。ラジーンはリサードのはとこだ。そう、ラジーンは魔法のフルートを演奏してくれたよ。

ラジーンは暖かい場所に行きたがっていたらしく、リサードが言うにはその場所はリフテンだと言う。

ヴィリヤは「ありがとう!リフテンね!」とお礼を言いリリに向き直った。

「聞いた?リフテンだって!すぐに向かえるなら嬉しいけど…セラーナのこともあるし、そうもいかないわね。セラーナを送り届けた後、リフテンに一緒に行ってくれる?」

リリはもちろん!と頷くと「とりあえず例のカジートが見つかってよかったね!」と笑いかけた。

「リリ」

その時、後ろから突然名前を呼ばれ…振り返ると、そこには…

ジョーカー!……ん?…っていうか、なんでここに?お散歩?

するとジョーカーは「いやぁ…入れてもらえなくてね…くふふ」と笑う、、

「え?入れてもらえないってホワイトランに?え?ドラゴンの報告は…?」

ジョーカーの話によれば、ホワイトランに着いたものの、入口の衛兵が「カジートは入れられない」の一点張りでどうやっても入ることができなかったんだとか。。

ドラゴンの話をしても「誰がそんなこと信じるんだ」と一蹴に付され、リバーウッドからの伝言だと言っても「リバーウッドの奴らが猫なんかに伝言を頼むはずないだろう」と笑われ、全く相手にされなかったらしい。

どうすべきか悩んでいたところにリサードのキャラバンがやってきたため、懐かしさもあって一緒にここでリリが来るのを待っていたと…。

えーっと…ということは…結局のところ全くドラゴンの話は伝わっていないと…?

ジョーカーは「いやあ、、面目ない、くふふふふ」と頭を掻いた。

これは…かなりまずい展開だ。。
どうしよう…ヘルゲンでドラゴンを見た日からずいぶん経ってるように思うけど…

なんか…今さら?今さら言いに行って逆に怒られたりしない?え、どうしよう、報告辞めよかな…(´・ω・`)

それよりリリ、その髪はどうしたんだ?

ああ、これ?と、リリはディムホロウ墓地でのことを簡単に説明した。

「なるほど、そりゃあ覚醒だな!」

同じことを言ったジョーカーを、「やっぱり家族だな(´・ω・`)」と思ったリリであった。

それよりも、だ!
どうするのよ、この状況…と考えていると、「今日はもう遅い。明日の朝一で報告すればいいさ」とジョーカーは呑気に欠伸をしている。

そして、リリの動揺を感じ取ったのか…

「大丈夫、そのまま伝えればいい。
僕は精いっぱい紳士的に、誠実に、伝えたんだよ?
それをあの衛兵たちは、カジートだってだけで大事な報告を跳ねのけたんだ。
お咎めを食らうのはあいつらの方で、リリではないよ。
さぁ、君たちもお疲れだろうから今日はもうバナード・メアで一杯やって休んだらどうだ?」と言った。

なるほど。それもそうか。カジートだと言うだけで中に入れなかったのはあちらの方だ。
こっちはなんにも悪くなんかないもんね!

リリは納得し、ジョーカーに今夜はどうするのかと聞いた。

「僕はリサードたちといるよ。リリは知らないかもしれないけど、僕の友人なんだ。また明日どうなったか教えてくれればいいよ。」

それだけ言うと、リサードとエルスウェアについて楽しそうにお喋りをはじめてしまった。

じゃあ、俺たちはバナード・メアに行くとするか

「じゃあ、また明日ね、おやすみ」

リリはジョーカーの背中に向かってそう言うと「うん、お疲れ様、くふふ」と手を振ってくれた。

昔によく聞いた物語みたい…二人の冒険者が世界中を旅しますのよ

去り際、セラーナがこんなことを…セラーナ、かわいすぎ(´Д`)

バナード・メアにはいつも通り大勢のお客が飲んで食べてと大盛況だ。

「ここはいつ来ても賑やかね、、あ、あそこのテーブルが開いてるわ」

とりあえずテーブルにつくと、これまたいつも通りサーディアが速攻で注文を取りに来た。

リリ

ここが流行ってるのはサーディアのおかげかもね…

「あ~疲れた~!」とエールを一口飲むと、ヴィリヤが「続き、聞く?」と話の続きをしてくれた。

ウィンキング・スキーバーの主人の娘のミネットは、よく彼女に本を読んでほしいとお願いしてきたらしい。
それはきっと、彼女の”なまり”や発音の間違いがとても面白かったからだろうとヴィリヤは笑う。
話の読み聞かせ以外にも、カトラ農場という所まで競争したりして随分楽しかったようだ。

「で、その競争には負けちゃってたんでしょ?」

リリがそう言うと、ヴィリヤは「違うわよ、勝たせてあげてたの!その気になったらもっと長い距離を走れるんだから!」と前のめりで説明する。

「なんだったら競争してもいいわよ!」

「いや、走るのは嫌いだから遠慮しとく(笑)」

そんなやり取りが終わった頃には、お皿の上はきれいさっぱりなくなっていた。

今日は一日歩きっぱなしで疲れちゃったわ。
お先に休ませてもらうわね

そう言うと彼女はベッドへと歩いていく。
セラーナも少し眠そうな顔で「わたくしもそろそろ…」と言うと、ヴィリヤの後を追ってベッドルームへと消えていった。

「リリ、ちょっといいか?」

見ると、隣で飲んでいたルシアンが手招きしている。

「うん?どうしたの?」と隣に座ると、彼は真剣な顔でこんなことを…

私は実務面…そう、戦いが苦手だ。戦闘は君に頼るしかない

リリが「そんなことないよ。ルシアン、戦闘もすごく頑張ってるじゃん」と返すと、「いや、まだまだだよ。そこで思ったんだが、私を訓練してくれないか?」と…

「それは全然かまわないけど、なんの訓練がしたいの?」

「自分でもそこがよく分からないから、リリのおすすめを教えてくれ」

訓練というからにはこちらがある程度自信のあるものでなければならない…
となると、必然的に弓術か隠密ってことになるけど…弓は私とオーリがいるわけだし、ここはどんな時も応用のきく隠密を教えるのがベストかも?

リリが隠密のあれやこれやをレクチャーしたあと、ルシアンに「わかった?」と聞くと彼は…

シーーーッ、静かにルシアン。こっそりとな、ルシアン

と言ってみせた…

うーん、、、果たしてこれは訓練になったのだろうかと疑問に思うリリ。

しかし、訓練を終えた彼は満足げに「ありがとう!もう隠密は完璧だ!今夜は気持ちよく寝れそうだよ」と言ってベッドルームへ向かっていった。。

リリもソロソロ休もうかなと思っていると「なあ…」と呼び止められる。

なあ、バナード・メアにアルゴニアン・エールがあるんだ。いい酒だ。取ってきてくれ。気づかれやしねえさ、頼むよ…

ブレナインと名乗る男を見ながら思い出した。
確かここにいる孤児のルシアがブレナインに色々と教えてもらっていると言ってたっけ…
そうか、この男のことか…

どういう背景があって今の状況になっているのかは知らないけれど、孤児のルシアの面倒を見ていることに変わりはない。
きっと根は優しい男なんだろう。

リリは少し考えてから「いいよ」と言うと、ブレナインは「アルゴニアン・エール!早く味わいたい!」と喜んだ。

エールは炊事場にあるということを聞いて早速向かう。
そして棚のところに一本のエールを見つけた。
すぐ後ろではあのサーディアが料理を作っている最中だけど、こちらには気づいていない様子…

リリはそーっと近づいていき、今まさにエールを手に取ろうとしたその時…

「アルゴニアン・エールね…、どうせブレナインでしょ」

「えッとー…いやあ…ハハハ…えへへへ…うふふふふ…」

何とか笑いでごまかそうとするも、サーディアは厳しい目つきでこちらを睨んでくる。
あー、これ衛兵呼ばれるやつかも…と思った時、サーディアはおもむろにアルゴニアン・エールを手にすると「ほら」とリリに突き出した。

…え?!…いいの?

あまりに突然の出来事にリリがサーディアを見つめると、彼女はため息をつきながらこう言う。

「私も彼に頼まれたことがあるのよ。まぁルシアの面倒を見てくれているし、これくらいいいんじゃない?」

彼女はそう言ってニッと笑った。
サーディアが自分と同じことを考えていたことに驚いたリリは「じゃあ、これ」とエール代30ゴールドを差し出す。

「あら…盗もうとしていたんじゃなかったの?」

「んー、盗もうとはしてたけどゴールドは置いておくつもりでいたの」

「ふふ、変な子ねぇ、でもこれじゃ多いわ。15ゴールドよ」

「その15ゴールドでルシアになにか食べさせてあげてよ、あの子おなかすいたおなかすいたってうるさいからさ」

サーディアはクスクス笑うと「わかったわ」とそれを受け取った。

一人テーブルにつきながら物憂げな表情で炎を見つめているブレナインに「はい、これ」とエールを差し出す。

それを見たブレナインは顔をくしゃくしゃにして「これはすごい!」と嬉しそうに笑った。
そして「お礼にこれを上げよう!」と回復薬をくれたのだ。

絶対盗ったな(´・ω・`)
まぁ、そうは思うけど彼の言うことを信じて”見つけた”ということにしておこう…

ブレナインは「ありがとよ」と言うと上機嫌でバナード・メアを出ていった。

エール騒動で目が覚めてしまったリリは、もう一杯飲んでから寝ようとカウンターに行ったところでまた声をかけられる。

ごきげんよう、旅の方。ホワイトランには何のご用ですか?

なんて返そう?首長に報告もしないうちにドラゴンの話をするのはまずいよね…
少し考えた末、リリは「ただの通りすがりだよ」と答える。

すると、彼は一つため息を吐くとこんなことを口にした。

「ドラゴンが一匹ホワイトランに近づいている。いずれこの場所も火に包まれるだろう」と。

え?ちょっと待って。もうドラゴンのこと知ってるの…?
そう思ったが口には出さず、かわりに「ここに住んでるの?」と聞く。

ジョン・バトル・ボーンという名の男は「そうだ。生まれた時からずっとな」と言い、続けてこんな話をしてくれた。

バトル・ボーン家は、グレイ・メーン家と共にホワイトランで暮らしてきた。
何世代もの間、互いの家族はみんな親族のように仲良くやってきていたにも拘らず、ウルフリックが反乱を起こしたせいで分裂。
今では、顔を合わせればすぐにでも殴り合いが始まりそうな雰囲気が漂っているという。

ジョンはそのことをよくは思っていないようで「全くばかげた話だよ」と鼻で笑った。
そして「まぁ、今ではドラゴンのほうが深刻な問題だけどな」と付け加える。

「そうだ、旅人のお前さんに忠告だ。あそこで歌ってる吟遊詩人のミカエルには気をつけろよ。あいつは金やら恋愛のことばかり歌って吟遊詩人の名を貶めているんだ。」

リリは「わかった。忠告ありがとう」と言い残すと「別に金やら恋愛の歌でもいいと思うけどな(´・ω・`)」と思いながら、パチパチと爆ぜる炎の前に腰を下ろそうした。

すると、またしても突然「グレイメーンか?バトルボーンか?」と声をかけてくる大男が…

ちょ…近い近い!

別の世では疫病が大流行中なんだから気をつけてよ!ディスタンス!ディスタンス!

「疫病?ですたんす?お前なに言ってるんだ?」

男はポカンとした顔をしながら「そんなタンスのことなどどうでもいい!バトルボーンなのか!グレイメーンなのかって聞いてるんだ!」とまた声を荒げる。

はあ!?さっきから言ってる意味が分からないんだけど!
っていうか、あんた誰よ?

リリがちょっとキレながら言い返すと「なんだ、新参者か?俺はイドラフ・バトル・ボーンだ。じゃあ、俺が詳しくホワイトランの現状を教えてやろう」と話し始める。

えぇ~~?なんかめんどくさそう…と思うリリを無視して男は話は続けた。

ここホワイトランでは「バトル・ボーン」と「グレイ・メーン」の2つの派閥に分かれているが、どちらも古く尊重されているということ。
違いは、グレイメーンは帝国に背いたが、自分たちバトルボーンは今も忠誠を誓っていることだ、と。

「というわけで、もう一度聞くぞ。バトルボーンかグレイメーンか!?」

別にどっちでもないし興味ない

もう半分寝ながら話を聞いていたリリは、欠伸をしながらそう答える。

イドラフは顔を真っ赤にしながら「遅かれ早かれ、みんなどちらかを選ばなきゃならいんだ」と吐き捨てると宿を出ていった。

あー…イドラフ・バトル・ボーン?さっきのジョンと家族ってことか…
どっちにしてももう眠い。そんな争いごとには首を突っ込みたくない。。

眠気がピークに達したリリはフラフラとベッドルームへと行くと、バフンと布団に顔をうずめたのだった。

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