次の日の朝。
早めに目が覚めたリリが食事をしようと下りていくと、テーブルには先客がいた。
「あら、おはよう。昨日はここに泊まったのね」
彼女はイソルダ。
以前バナード・メアに来た時に少しお話したお姉さんだ。
「あー、あの時の…」と言うと「思い出してくれた?」とにっこり。
「たまには朝食をここで取るのもいいかと思ってね、一緒にどう?」と誘われ同席することになった。
「マンモスの牙がなかなか手に入らなくて困ってるのよ…」
そういえば、前に話した時もマンモスがどうのこうのと言ってたな…
ねえ、どうしてそんなにマンモスの牙が欲しいの?
そう問いかけると、彼女はどうやらこのバナード・メアを買い取るつもりでいるという。
その資金を貯めているところらしいのだが、カジート・キャラバンのマドランというリーダーがマンモスの牙を持ってきたら商人になる手助けをしてやろうと言ってきたんだとか。
だけど、マンモスの牙なんて口で言うのは簡単だが、早々手に入らない状態で困っていると…
………
‥‥‥‥‥‥マンモスの牙って、あそこに置いてあったやつじゃなの…?(´・ω・`)
そう、リリはすでにこのバナード・メアでマンモスの牙を見つけていた!
「ねえ、あなた旅をしてるんでしょ?
マンモスの牙を見つけたら譲ってもらえないかしら?
もし譲ってくれたら取引のコツをいおくつか教えてあげるわよ?」
取引のコツ?コツってことはお買い物をする時に上手に値切れるとか、あわよくばタダで貰えるようになるとか、そういうことか!!(タダはない)
ふんふん!おっけーおっけー!任せといて!
リリはすぐに席を立つと、マンモスの牙の置き場所へ直行!
幸いフルダは向こうを向いてるし、サーディアは厨房だ。
客の一人がめちゃくちゃ見てるけど、リリは全く気付いていない…
しかし問題が…背が低いリリでは手を伸ばしても牙まで届かないのだ!
んもぅ!と、スニークしたままぴょーんぴょーんと飛び跳ねる。
5~6回飛び跳ねた後、上手く牙を手にしたリリは意気揚々とイソルダの元へ…
「ヨイセ…ズゴゴ……ヨイセ…ゴゴゴ…イソルダー!これでいい?」
ガゴガゴと豪快に牙を引きずってくるリリにイソルダは唖然…
「あれ?これじゃなかった?」と聞くと、彼女は「あ?あぁ、いえ、うん、それ、それでいいんだけど…なんていうか早すぎだなーと思って…」
でしょ?私は仕事が早いのが売りなの♪
さぁ、取引のコツってやつ、教えて♪
イソルダは「わかったわ。出所はどうであれ…これでキャラバンとの取引ができるわ、本当にありがとう」と言って値引きの仕方や出来るだけ高く買取るコツなど、様々なことを教えてくれた。
お陰でリリの話術はグンと上がった!
ふふふ…これでもっとお得にお買い物できるぞ~♪
おはよう~リリ、なにしてるの?
気が付けば、オーリを筆頭にみんなが起きだしてきている。
「ううん、ちょっと人助けしてただけ~ウフフ」と嬉しそうなリリを見て、みんな「またなんかやったな…」と思わずにはいられない。。
バナード・メアを出て風地区と呼ばれる場所まで来た時、二人の男性が声を荒げながら話し込んでいるのが見えた。
何者かが農場から作物を盗んでいる。お前の一族の者が犯人だったら、監獄で朽ち果てさせてやる
そうまくし立てているのは、オルフリッド・バトル・ボーン。
「よく気が付いたな。そんなに賢いとは驚きだよ、オルフリッド。皇帝へごまをするのに忙しいのにな」
負けじと嫌味を言ってるのがヴィグナー・グレイ・メーン。
続けて「笑ってはいられなくなるぞ。いずれサルモールがストームクロークの同調者を根こそぎにする」とオルフリッド。
一時は仲良しだったのに、よくまぁここまで憎み合えるようになるもんだなと、ある意味感心しながら横を素通りしていく一行。
そして今日も声高らかに演説を続けているヘイムスカー…
しかし、あなたはかつて人間であった!そうだ!人間としてあなたは言った、”北の大地に生れしストームクラウンのタロスの力を見るがよい、我が息が長き冬となる”
「俺がタロスだったら、そのうるさいのを俺に近づけるなと言うね!口ばかりデカくて脳はちっぽけな野郎だ…」
イニゴはヘイムスカーのことがかなりお気に召さない様子である。
まあ、好きな人も珍しいのだけれど…
おお!近くで見ると本当に大きいな!
目の前にはドラゴンズリーチ。
ルシアンはそれを見上げながら「素晴らしい!」と連呼している。
「よし!行こう!」
リリ達はその長い石階段を駆け上がった。
大きな扉を開けると、中はとても広く天井が見上げるほど高い。
すごい。ただただすごいですわ
その眺めは圧巻で、セラーナも目を輝かせて感嘆の声をあげている。
広い場所だな!歌って踊って尻尾を追いかけたくなる!
…大丈夫だ、自制心はある!
壮観なドラゴンズリーチの広間で、みんなテンションがアゲアゲだ!
「お、あの奥に座ってる男が首長じゃないか?」
ルシアンが見つめる先を見ると、大きな椅子にふんぞり返っている男の姿が見えた。
なにやら揉めている最中のようで、首長と思われる男の声はリリ達がいる入口の方まで聞こえている。
「とにかく行ってみるしかないわね…」
ヴィリヤに急かされるように階段を上がっていった時、女性が1人剣を抜いて近づいてきた、、
邪魔してどうしようっての?バルグルーフ首長は訪問者には会わないわよ
女性は威圧的にそう言ってリリを睨みつける。
「リバーウッドにいるアルヴォアって人から、首長に伝言を頼まれてきたんですけど…」
リリは、一応ここが首長の屋敷ということもあって丁寧に話し出した。しかし…
「私は私兵のイリレス。私の仕事は首長とその一族を脅かすあらゆる危険を処理することよ。あなたが何者なのかわからなければ通すことはできないわ。さあ、何者なのか言いなさい!」
あまりにもこちらを無視した態度にイライラしたリリは、イリレスを睨みつけるとこう言い放った。
「リバーウッドが危ないの!でも伝言は首長本人に伝えるように言われてるから、あんたみたいにお高くとまったヤツには言いませーん!ベーだ」
あーあ、、言っちゃったわね…
そんな悪態にわなわなと顔を引きつらせているイリレスに、リリは重ねてつっかかっていく。
「なにさなにさ、人がせっかく伝言を持ってきてやったっていうのにその態度!首長の私兵だか何だかしらないけど、あんたそんなに偉いわけ?
別にいいんだよこっちは!どうなったって知ったこっちゃないもん。ふーんだ」
「いい度胸じゃないの!私は私兵なのよ!とってもとーーーっても偉いのよ!」
「はあ?どこが?どの辺がどういう風に偉いのか言ってくれないとわかりませーん」
そんな子供の喧嘩のようなことをしていると、後ろから「大丈夫だ、イリレス。通してやってくれ。」と声がした。
見ると、バルグルーフ首長と呼ばれていた男がくっくっと笑いながらこちらを見ている。
その言葉を聞いた途端、イリレスは「はい、首長」と剣をしまうと「さっさと行きなさい!」と吐き捨てた。
まったく!なんなのあの態度!
私兵だろうが首長だろうが礼儀くらい通しなさいよ!
腹の虫が治まらないリリに、オーリが「まあまあ……さぁ、行こう?」と宥める。
「私兵があんなんじゃ、首長なんてとんでもなく高圧的なやつに決まってる!」
そんなことをブツブツ言いながら首長の前に立ったリリに対して、彼は意外にも申し訳なさそうに謝ってきたのだった。
あまりにも想像と違っていた展開に「あ…いやぁ…うん、別にいいけど…」とたじたじになってしまう。
「それで、リバーウッドが危ないっていうのは本当なのか?」
「うん、本当だよ。ドラゴンがヘルゲンを襲ったの。アルヴォアが、次はリバーウッドに来るんじゃないかって怖がってて、ばう…ばぶるるーふ首長に伝言を頼むように言われたんだけど…」
「そうか、、じゃあヘルゲンがドラゴンに襲われたっていうのは確かな情報なんだな?バルグルーフな」
「うん、だって私がヘルゲンで帝国軍に首を落とされそうになった時にそういうことになったからね…。
だから早くばぶぶ…バ…ばるるるーぷ首長に伝えなきゃと思ってたんだけど、色々あって遅れちゃって…」
「処刑されそうになってたのか?それにしても自分の犯罪歴をサラっと言うんだな、ハハハ気に入ったよ。バグ…バルグーフな」
「でも、ホワイトランに来てみたら街の人はすでにドラゴンのこと噂してて、だから早くばぐるるーぷに本当のことを伝えないとって…」
「ああ、最近になってそんな噂が街中に溢れてきたんだ。どうもどこかのカジートがその噂の元らしいんだが、出所ははっきりとしない為にこちらも動きようがなかったんだ。バ…ばぐるるーふな……‥あれ…」
「あ!それ!私の友達なの!さっきも言ったけど所用ですぐに来られなかったから彼に頼んだんだけど、彼がどれだけ説明しても入口に立ってる衛兵は全く耳を貸さなかったらしくて、門前払いだったんだよ!
もう自分でもわからなくなってんじゃん(´・ω・`)」
「そうなのか!?それは悪いことをしたな…すまない、カジートは要塞には入れないようにしてるんだ、ほら色々問題も多いからな。
しかし、お前の友人というのなら別だ。今度連れてきてくれないか?直接謝らせてほしい。
ああ、もうなんだってこんな言いにくい名前なんだ…」
「ほんとに?いいの?ありがとう!彼に伝えておくね。ちなみに彼の名前はジョーカーだよ、覚えておいてね!
もうバルちゃんでいい?いいよね?(´・ω・`)」
「わかった、ジョーカーだな。覚えておくよ。
うん、もうそれでいい………」
今はどう思う、プロベンタス?壁の強さを信じ続けるか?ドラゴンを跳ね返せると?
バルちゃんが隣に立っている男にそう問いかけるも、先にイリレスが「首長、ただちにリバーウッドへ兵を送りましょう」と言う。
それに対し、プロベンタスは「ファルクリースの首長は挑発と受け取るはずです!我々がウルフリックと共に攻撃をしかけてくると思うでしょう」と反発。
バルちゃんはそんなプロベンタスに「ドラゴンが私の領地を焼きつくして人も殺されているのに、ぼけっと突っ立ってるつもりはない!」と一喝!バルちゃんかっこいい!
そしてイリレスに、早急にリバーウッドに兵を送るようにと指示をする。
バルちゃんはリリに向き直ると「ホワイトランに果たしてくれた貢献は大きい。このことは決して忘れないぞ!ほら、ちょっとした感謝の印だ!」と言って鎧を一つ手渡してきた。
ドクロ…
女子にドクロはないわよね…これはリリに同意するわ…
「なんかもうちょっと他のないの?(´・ω・`)」と聞くと、今渡せるものがそれしかないと言うバルちゃん。
確かにドクロ装備はまずかったと思ったのか、「次、来た時は何かいいものを用意しておくよ。今日はそれで勘弁してくれ、な?」と宥め始めた。
そして、続けて「実はもう一つお願いしたいことがあるんだ」と言ってくる。
あ、無理、セラーナ送り届けないといけないから
ドクロの鎧によほどガッカリしたのかヤル気ゼロのリリ。
「え、そこ断るの?これ大事なクエストだよ?(´・ω・`)」
「だってセラーナを送り届けないといけないんだよ?ヴィリヤも早くリフテン行きたいって言うし、エルダーグリームとか言う所にもいかなきゃいけないし、もう超忙しいんだよ!」
そう言うと踵を返し「じゃ、また暇なとき来るわ(´・ω・`)」と立ち去ろうとした時だった…
「この依頼を受けてくれたら家を持たせようと思ってたんだが…いらないか…そうか、いらないか…」
リリはバルグルーフに走り寄り「さぁさぁ、何をしてほしいのかな?うふふ」とにっこり微笑んだのだった。。