大広間のドラウグルを殲滅し、さぁ進もうかと思った時だった。
後ろから「うぐるるる」という声が微妙に聞こえてくるのだ…
もしかして…まだいる…?
警戒しながら振り返ると、なんとそこにはセラーナの横でグルグル言ってるドラウグルがっ!!
「ちょっ!?セラーナ!横!横!」
大慌てで弓を引こうとした時、セラーナが「あ。これは大丈夫ですのよ」と…
ペット?!
一体なに言ってるんだこの子は!?
で、よくよく話を聞いてみたら、どうやら先ほど倒したドラウグルを死霊術で復活させたのだという。
こちらに危害は一切加えないし時間が立てば自然に灰となるらしく、これはセラーナの戦術の一つなんだとか。
「ま、まぁそういうことなら…」と納得したものの、こやつらの「うーうー」という声は結構耳に響くし、本物の敵がいるのかどうかもわからない状態になってしまう。
なかなかに困った戦術ではあるな…と思いながらも出口の方へ…
イニゴも気になってる様子…
そして出口前に並んでいる3つの椅子の裏側に…
「やった!みっけー!」
中身は「エルフの弓」や「ドワーフの片手斧」「激昂の杖」などがわんさか入っていた。
遺跡はお金になるな~ほっくほくやで~♪
…ねえねえ、あっちなんか光ってない?
宝箱の中身をせっせと出してる隣で、オーリが右のほうを指している。
「ん?…なんだあれ…」
恐る恐る近づいていくにつれ、なんだか変な声が頭に響きだした。
「なんか…変な声しない?」
リリがそう問いかけるも、みんなはキョトンとした顔でこちらを見ているだけだ。
「なにか聞こえるの?私には何も聞こえないけど…」
ヴィリヤは不安げな顔で「行かないほうがいい」と言うようにリリの袖を引っ張った。
リリの耳にはなにが聞こえてるんだ?
「何って言われるよくわからないんだけど…強いて言うなら…」
リリはそう言うと思いっきり息を吸い込み、力いっぱいにその声を表現してみた。
ドゥン!ドゥン!どぇす!どぇす!
ドッ!ドッ!ドゥスドゥス!
みたいな感じ?(´ω`)
意味が分かりませんわ…儀式か何かですの?
全然みんなにわかってもらえない…(´Д`)
危険な感じはするけれど、なんとなく目の前に立ちはだかるその壁に呼ばれているような気がしてリリはフラフラと近づいていく。
「ちょっと!やめなさいってば!」
ヴィリヤが叫ぶ!
その声が届いているのかいないのか、リリはまっすぐに壁へと進んでいった。
すると壁の一部からゆらゆらと青白い光が…
リリが近づいていく毎に光も声もどんどん大きくなる。
「リリ!!」
ルシアンの声と共に一瞬辺りが光に包まれたかと思うと、何かが体の中へと入ってきたのがわかった。
それは一瞬の出来事で、一体何が起こったのかリリ自身にもわからない。
気づけばあの変な声も、光も、何事もなかったかのように消えていた。
「大丈夫か!?」
突然の出来事に呆然としていた5人は、我に返るとすぐにリリに走り寄った。
「うん、別に…なんともないと思うんだけど…」
「本当に?本当に大丈夫なのね?」
ヴィリヤが心配しながら体全体をチェックする。
「うん、ほんとに大丈夫みたい。さ、次々!」
「びっくりしたな、絶対ヤバイことになると思ったぞ」
「でもリリにだけ聞こえたなんて変だね」
「同族の誰かが何か仕込んでいたのかしら…」
「本当にスカイリムの遺跡は不思議なことだらけだな!」
そんなことを口々に話しながら歩いていると、前方から冷たい風が吹き込んでくるのが分かった。
やった!出口だ!
この愉快な場所で永遠の住人になるところだったな!
レバーはすぐそこだというのに、絶対に触ろうとしないセラーナお嬢様、、
リリは安堵しながらレバーを引き、「やっと地上に戻れる!」と逸る気持ちで坂を駆け上がった。
「ああ、また息ができるなんて素晴らしいですわ!」
ふわりと降ってくる雪を見上げながらセラーナは嬉しそうに目を細める。
そして「でも寒いよ~」とリリが腕を摩っているのを見て「こんな天気でも、洞窟の中よりはましですわ」と少し微笑みながらフードをかぶった。
ねえ、、リリ…なんか…髪の毛変じゃない…?
え?と振り返ると、ルシアンもイニゴもまじまじとこちらを見ている。
「え?!なんかおかしい!?」
そういうリリにヴィリヤが鏡を差し出す。さすが、女子力が高い!
元々チョコレート色だった髪は、薄いピンクベージュになっている。
「え?…なんで?!」
もしかして、、あの変な光を吸い込んだせいじゃないか?
なるほど…これは…あれだ…
髪色の変化以外には何の変化も見られないけれど、とりあえずそういうことにしておこう。
「それよりも、ちょっとお願いがあるんだけど…」
セラーナの実家の場所を確認するために地図を見ていたリリはあることに気づいていた。
それはホワイトランが思ったよりも近くにあるということ。
ジョーカーがちゃんとホワイトランまで行けたのかどうかも気になっていたし、ドーンガードについての報告もしておきたい。
「だから、セラーナのうちに行く前にホワイトランに寄っていってもいいかな?」
そう聞くリリにみんなは「いいんじゃないか」と同意。
セラーナも「仕方ありませんわね、、」と不承不承ながらも納得してくれた。
急ぎましょう。太陽は…お肌の大敵ですのよ。分かっているとは思いますけれど
ホワイトランへと向かう中、空はどんどん暗くなりかなりの吹雪になってきた。
「ちょっと…前が見えないわ…!」
「どこかで休んだ方がよくなくて…?」
しかし休める場所などどこにもない。そんな中、目の前にぼんやりと見えてきたのは変な建物。
入口のようなものはあるけれど、鍵がかかってて中には入れない。
その周りには焚火とテントがあり、つい今し方まで人がいたような形跡も…
「なんだろうね、ここ」
そう不思議そうに呟きながら、袋や宝箱に入っているものをせっせと取り出していくリリ。
どんな時でもすべて掻っ攫っていくその精神、盗賊の鏡だな…
暫く行くと遠くのほうに二人の影が。
誰かいる…と思った瞬間、なんと武器を振り上げながらこちらに走ってきた。
「どうみても友好的な人物ではなさそうだな」
ルシアンの言葉と同時に矢を放ったのはオーリ。山賊はあっけなく雪に埋もれる。
近くには女性が1人倒れていて、すでに息はないようだ。
女性はとっても器用な格好で死んでいた。
彼女の持ち物を見てみると、そこにはメモが…
もしこれを読んでいるなら、恐らく私は死んでいるだろう。山賊の集団が私の家を荒らし回り、価値のある物をすべて奪っていった。最悪なのは、家に何代も伝わっていたペンダントを取られたことだ。家族のほとんどは死んでいるから、それが彼らとの最後の繋がりだった。私はペンダントを取り戻すためにあの悪党どもを追う。例え命にかえても。
「もしかしてこれのことかな…」
さっき倒した山賊から剥ぎ取った物の中にあったネックレスだ。
そうか、これを奪い返すためにこの女性はこんな雪の中を追いかけて、そして殺された…
リリは自分とこの女性の境遇を重ね合わせ、みんなを死に追いやった山賊への怒りと悲しみを思い出した。
「敵は取ったからね…!」
横たわる彼女にそう囁くリリ。
でもネックレスは持っていきますのね…
気づけば吹雪も治まり、空には少しの晴れ間が見え隠れしている。
とりあえず雪がやんでくれてよかったと安堵していると、ルシアンが遠くを指さし嬉しそうに「おい!あれ!」と叫んだ。
見れば遠くのほうに大きな建物の影が…
「ドラゴンズリーチね!」
「ジョーカーいるかな~?」
雪が所々残る地面からは草が顔を出し、目の前には農場らしきものも見えている。
リリ達はドラゴンズリーチへ向けて走り出した。